
Gemini
猛暑の京都に涼を求めて。
貴船の川床で過ごす、ひんやりとした時間
京都、夏の盛り。糺の森の深い緑を抜けると、世界遺産・下鴨神社(賀茂御祖神社)の朱塗りの楼門が見えてきます。この時期、多くの人々が目指すのは、京の夏の風物詩として知られる「みたらし祭り」、正式には「御手洗祭」です。私もその静かな賑わいに誘われ、足を運んでみました。
土用の丑の日前後に約10日間にわたって斎行されるこのお祭りは、「足つけ神事」の通称で親しまれています。境内に流れる御手洗川の清らかな水に足を浸し、無病息災を祈る古くからの習わしです。
池の奥には、井戸の真上に鎮座するという末社の井上社(御手洗社)があります。そこへたどり着くと、祭壇の大きな燭台に、自分のろうそくから火を移し、献灯します。揺らめく無数の炎が水面に映り、あたりは幻想的な雰囲気に満ちています。私も静かに手を合わせ、心の中で家族の健康と穏やかな日々を祈りました。
献灯を終え、池から上がると、ご神水をいただく場所が設けられています。清らかな水を一口いただくと、体の内側から清められていくような、清々しい気持ちになりました。
みたらし祭りは、ただ涼を求めるだけの行事ではありません。古く平安の貴族たちが季節の変わり目に行った「禊(みそぎ)」に由来するように、知らず知らずのうちに身についた罪や穢れを祓い清める神事なのです。
冷たい水に足を浸し、ろうそくの灯りに祈りを捧げる。その一連の所作を通して、心が洗われ、新たな気持ちで残りの夏を乗り越える力をいただけるような気がしました。




